9・11の標的をつくった男  天才と差別―建築家ミノル・ヤマサキの生涯

9・11の標的をつくった男  天才と差別―建築家ミノル・ヤマサキの生涯は、9.11の標的ワールドトレーディングセンターを建築した日系アメリカ人の詳細なドキュメンタリーです。なかなかの大作でページ数も多いので熟読はできず、流し読みで終わらせました。本のタイトルが良いですね。

まさにアメリカを体現したドキュメンタリーになっていると思います。アメリカのどこを切っても、おなじような内容になるのではないでしょうか。ミノル・ヤマサキの建築スタイル、作品で中東との関連性を披露されています。若干の意味合いを持たせていますが、ミノル・ヤマサキと中東との関連が特に深いというふうに取るよりは、アメリカと中東との関連が深いというに解釈すべきだと思います。そういった意味で、ミノル・ヤマサキは現在のアメリカをそのまま体現したといえるのではないでしょうか。

エピローグにての著者の次の文章が心に残ります。

9・11が再びめぐって来る。現場では、例年のように犠牲者たちを悼む追悼式が行われる。しかし、そこには、ミノルが情熱を捧げたWTCの面影はない。貿易を通じて弱小国にもフェアに世界平和をもたらそうという目的でミノルが建て、しかしその目的とは裏腹に、弱小国を搾取して利益を吸い上げる大企業の富とグローバリズムの象徴になったWTCは、もうなかった。

あれから、でっち上げの疑惑で湾岸戦争をおこし、石油や資源を高騰化させ、詐欺まがいの金融政策でリーマンショックをおこし、いまや、ドルの垂れ流しで世界をドル漬けにしながら、それでも暴利をむさぼり続けるアメリカ。正義と公平さの主張の向こうには、常に強者のみの世界観が横たわる国。すべての富を奪い取るということはどういう事なのだろうか、壮大なパワーゲームのいく末をいま世界が経験させられようとしているのだ。

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