猿の詩集(上・下) / 丸山健二 読みました

猿の詩集〈上〉読みました。

戦争で死んだ兵士が、霊となって故郷に帰り、原爆の爆発のショックからか居合わせた年老いた猿の体に、詩人の魂、鳶の視覚と合体して戦後の故郷を見守るという筋書きです。

文章は、詩人の魂と合体したわけですので、散文詩のような、リズミカルな文体で書かれており、読後しばらくは耳に残ります。読み終えるのに4-5日かかりましたが、個人的ですが、その間、戦争経験のある親父が、非常に近くにいるような感覚がありました(親父は30年くらい前に他界しています)。

夢などにでてきたのですが、とくに因果関係には気づきませんでしたが、おそらくこの本の影響かと思われます。読書前にも、親父のことはきになっていたので、逆にそのことがこの本に巡り会わせてくれたのかもしれません。

最近読書したのは、佐野眞一の「だから、君に、贈る。」手元に未読の「スタッズ・ターケル自伝」があり、普通の人々の生活に関心がある書籍が偶然に並ぶこととなりました。なにか意味があるのでしょう。

この本は、戦後を生きた人々の生活を、猿の体、詩人の魂、鳶の視覚と死者の観点からあますところなく伝える本に仕上がっています。

バグダッド・カフェ <ニュー・ディレクターズ・カット版>

バグダッド・カフェ <ニュー・ディレクターズ・カット版>見てきました。楽しい映画でしたね。デジタルリマスター最高に美しいバージョンとのことですが、確かにきれいな画面でした。内容とも、今の映画だといっても十分に通用すると思います。

ウイキペディアを参照したところ、1989年にオリジナル、1994年に完全版でリバイバルヒットしたということです。主題歌は大ヒットしたのは知っていましたけれど、映画がそれほどヒットしていたとは今まで知りませんでした。

映像、ストーリィ、脚本、配役。すべて良かった。出会えたことに感謝します。

北朝鮮情報戦/NHKクローズアップ現代

北朝鮮の情報が、現在は中国国境付近の携帯電話から中国を経由して、韓国に流れているという。 第三世代の携帯電話をはじめとするITの進化が情報収集に大きな変化を与えている。

北朝鮮国内の電話網を携帯網で中継して韓国に送信されているわけだ。実際に画像で見ると、電話の受話器と携帯電話をテープで張り合わせて中継しているのだが、それで十分に通じているのだからすごい。

いままでより、草の根に近い方の情報だが、早くて詳細なので、アメリカの報道も注目し始めているらしい。最近のデノミの情報はここが最初に発信したものだということだ。

仏教が好き /河合隼雄 x 中沢新一

仏教が好き!読みました。かなりおもしろい。とんでもなくおもしろい。

河合隼雄さんが、中沢新一さんに教えを乞う形で対談が進んでいきます。河合さんの聞き上手とあいかわらず、というか、ますます冴える中沢新一さんの頭脳、博識に圧倒されます。まるごと食べちゃいたいぐらいの本です。

しかし、中沢さん。こんなにすごいのになんでオウムを擁護しちゃったの?

雑誌に掲載された麻原と中沢さんの対談を、私はたまたま読んでいました。河合さんとの対談に比べれば中沢さんらしくない薄っぺらい対談だったように思いますが、よく憶えてはいません。ただ、雑誌の掲載写真の麻原と中沢さんが微笑みが忘れられません。頭脳明晰も博識もつまるところ空しいものだった・・・、そういうことなのでしょうね。

ちょっと抽象的になりましたけど、具体的にいうと。たまたま、いまこの本のページをめくったところ、瞑想についてのところが開きました。その部分を以下に提示します。

河合--そのときにエックハルトとか西洋の神秘思想家たちがやはり瞑想していたということは大事なポイントです。

中沢--大きいと思いますね。

河合--「神に祈っている」との「瞑想」とはちょっと違って、瞑想の知恵の方へいくとエックハルトみたいになるのではないかな、と思ったりしますけども。

中沢--そうですね。井筒先生が「メタ宗教」という考えについて書かれたときに、イスラムでもスーフィー、神秘主義の方に入っていくと、ほとんどこれは仏教と同じになってくる、キリスト教だってユダヤ教だってカバらから神秘主義へ入っていくとだいたい同じになるとおっしゃっていることは、そのことに関わっています。媒介しているのは必ず神秘主義的な体験といわれているもので、これは瞑想です。

河合--確かにそう思います。

中沢--で、「瞑想とは何か」、一言でいうと、大脳新皮質の活動を停止させたときに見えてくるものがあると、そのことに尽きると思います。そのときに何か変化が起こってくる。これを井筒先生は「あらゆる宗教が突き抜けていく先がある」と表現されましたけれども、それを脳の中でどこに探していくかというと、大脳が新しい皮質の活動を停止させたときに、古い皮質が活動しし始めていきますよね。そのへんでしょうか

河合--その古い皮質が活動するときに覚醒度を持っていないといけない。覚醒の度合いが高くないといかんわけですよ。普通、新皮質を停止すると、全部寝てしまうんですよ。われわれが瞑想すると眠くなる(笑)。それをずうっと覚醒の度合いのレベルをちゃんと保持したままで新皮質の活動を停止する。この練習をしているのが瞑想やないでしょうかね。

中沢--その瞑想の練習には呼吸法が一番重要な働きをして、呼吸法がどうも間脳とか脳幹のあたりを活性化させます。古い皮質が煌々と目覚めていくる状態を作りだす、一つの一番確実な道は呼吸法になってくる。だいたいどの神秘主義的な瞑想法でもそれは言っています

河合--それと僕はやったことないんですけど、早くて深く深呼吸を持続させる過呼吸法ってどうなんでしょうね。たとえばトランスパーソナル心理学のスタニスラフ・グロフというおもしろい人がいるでしょ。あの人たちは過呼吸させるんですよ。やっているうちに変成意識が生じてくる。そういうのはどこか関係ありますかね。

中沢--あの人たちの探求には、ドラッグ体験がきっかけになっていますから、そっちからいくとグロフのような探求がでてくると思います。

・・・というような対談ですが、内容はきわめて正確ですね。で、問題は中沢氏は瞑想を実践しているのかということです。

逆にいうと、瞑想を実践している人間がオウムを擁護するようなことができるのかということです。これは理屈ではなく、結果です。

中沢氏の対談から言葉を使って、もう少し説明してみましょう。

大脳皮質、欲得や打算を考える場所ですが、これを働かせなくすると古い脳が活性化する。この古い脳は、直感的にすぐれていて、理屈に関係なく、危険が迫ると避ける。剣道や柔道の格闘技でもそうで、最終的には直感的な動きを働かせられるかどうかが生死を決める。

格闘技の条件反射的な体の動きだけとどまらず、決定的に危険な状態に陥りそうなときに、古い脳はありとあらゆる潜在意識をも利用し、時空をも超えて、危機から脱出を図ろうとする。

違う言い方で説明すると、もしくは意識的に説明すると、考えられない偶然が次々に重なり、どうしてもその危機に近づくことすらできなくなる。そうして、結果的に身の安全が維持される。「君子危うきに近寄らず」という言葉がありますが、これはまさしくそうです。意図する、せざるに関係なく、君子は危うきには近寄らないものなのです。

つまり、中沢氏とオウム麻原との対談は、中沢氏が瞑想を実践していれば、あり得なかったのではないかと私は思うのです。

ちょっと話がずれましたが、中沢氏の頭脳明晰さと博識に触れるたびに私の脳裏にオウムが表れてしまうのです。 中沢氏のオウム擁護はとても惜しいのです。そしてそれは、消えることのない事実なのです。

ウェブ進化論 / 梅田望夫(うめだもちお)、そしてyoutube とamazonからのメール

ウェブ進化論を読み始めました。ブックオフで105円でどさっと5冊ならんでいたので、手にとって序章、最初の数ページ読んでみたら、おもしろくて購入。帰宅してからアマゾンで調べると1円、そしておどろいたのが大量のレヴュー(この時点で285件)。これはすごい数です。では、書き出しの序章(抄)を読んでみてください。

「映像編集ツールが与えられたからといって誰もが素晴らしい映像をつくることはできない」、「音楽編集ツールがあるからといって誰もがミュージシャンになれるわけがない」「ワープロソフトが普及したって誰もがいい文章を書けるとは限らない」というのは確かに真実なのであるが、道具の普及が私たちの能力をぐっと高めていくことも、一方で真実である。特に子供の頃からこうした新しい道具を与えられた世代からは、明らかに旧世代とは違うリテラシー(表現能力)を持った人たちが数多く育っていくに違いない。チープ革命以前ならば、こうした表現行為をおこなうためには、テレビ局、出版社、映画会社、新聞社といった組織を頂点とするヒエラルキーに所属するかそれらの組織から認められるための正しい道筋を歩むしか方法はなかった。それゆえに既存メディアに権威が生まれた。 しかし、日本だけでも数千万人、世界全体でいえば10億人規模の人々が、某か自らを表現する道具を持ち、その道具が「ムーアの法則」の追い風を受けてさらに進化を続けててくと何が起きるのか。それは、今とは比較にならないほど膨大な量のコンテンツの新規参入という現象である。人口全体に対する表現行為をおこなう人たちの比率はそうおおきくなくても、母集団が数千万とか億という単位になると、コンテンツの需給バランスが一気に崩れる。 「そんなコンテンツなんて大半はくずなのではないか」というのも権威側からよく聞かれる言葉なのだが、玉石混淆の膨大な量のコンテンツの中から「石」をふるいよけて「玉」を見いだす技術も、今や日進月歩ならぬ分進一歩といったスピード感で進化を続けている。 フジテレビ・ライブドア問題、TBS・楽天問題とは「チープ革命」がもたらすこれからの「総表現社会」ともいうべき方向性によって、テレビ局に代表される既存メディアの権威が揺らぎ始めた象徴なのだ。・・・ グーグルの登場は世界中のIT関係者を刺激した。「増殖する地球上の膨大な情報をすべて整理し尽くす」という領域についての研究、技術開発、ビジネス創造が今や大変な勢いでおこなわれるようになった。ここがポスト・ネットバブルたる現代の本質で、90年代後半とは全く様相を異にしているところである。そしてそれはすべて、インターネット登場以来の懸案だった玉石混淆の解決につながる営みなのである。 それと同時に「チープ革命」も粛々と進行中で、表現行為のためのコスト的敷居は年々低くなり、道具は誰にでも使える方向に進化するから、表現者は増加の一途をたどる。グーグルと「チープ革命」が相乗効果をおこす形での「本当の大変化」はこれから始まるのである。 ・・・ そしてそれは、つまるところ「プロフェッショナルとは何か」「プロフェッショナルを認定する権威とは誰なのか」という概念を確信するところへとつながっていく・・・。プロフェッショナルであると認定する権威は、既存メディアから、グーグルをはじめとするテクノロジーに移行する。それに関わる「富の分配メカニズム」も全く新しいものに代わる。テクノロジーがその時々の「旬なプロフェッショナル」をネット上から常時選び出し、彼ら彼女らの知的社会貢献を自動算定し、広告費などを原資に、個々にきめ細かく応分な報酬を自動分配することになろう。 生活コストの安い発展途上国の若い人たちの中には、知的生産活動をネット上に公開することの対価としてグーグルから送られてくる毎月の報酬で生計を立てる人々も増えている。

書き出しは以上ですが、いかがでしょうか。

実は数日前にyoutubeからメールが来ました。内容は以下の通り、

動画 DESTROYAH vs. GODZILLA の人気が高くなっています。このため、この動画を YouTube パートナーシップ プログラムに登録し、動画の再生から収益を上げることができます。

承認された動画から収益を上げるのは簡単です。まず、YouTube アカウントにログインします。次に http://www.youtube.com/ivp?v=pLPaiEAcGe4 にある手順に沿って設定を行います。完了すると、動画の横に広告が表示されるようになり、プログラムの要件を満たしている限り、広告からの収益の一部を受け取ることができます。

YouTube パートナーシップ プログラムへの動画の登録をお待ちしております。

YouTube チーム

以上がyoutubeからのメールです。この動画は2008年01月25日 21時59分35秒に投稿したものですが、コメントなどもかなり寄せられており、評判がよいようです。しかし、こんな勧誘のメールが来るとは考えておりませんでした。youtubeはしたたかに進化しているようです。さっそく申し込みをしてみましたが、この申し込みも契約社会アメリカの企業らしく、詳細な確認内容で、まぁ、びっくりしました。

そしてこれも数日前ですが、amazonからのメールです。

Amazon.co.jp在庫切れ・品薄商品のお知らせ
出品者在庫  (1)

平素はAmazon.co.jpをご利用いただき、ありがとうございます。
出品者様の在庫状況についてお知らせいたします。以下は、 2010年3月20日 の時点において、在庫切れまたは過去一週間の販売状況を元に品薄であることが確認された商品です。ぜひ補充をご検討ください。
出品者から出荷する商品 (出品者在庫)
出品数の更新手順
商品名 販売数(過去一週間) 現在庫数 在庫切れまでの日数
1 xxxxxx

ASIN:xxxxxx SKU: xxxxxx
7 2 2 日

このような詳細なアドバイスは、はじめての経験でしたので非常におどろきました。youtube、amazon、いずれも確実に進化しているようです。

話は戻りますが、書籍ウェブ進化論、レヴュー上ではさまざまな意見が飛び交っていますが、しかし、着実にウェブは進化しているようです。たまたまメールがきた時期も重なったこともあり、序章の次の章へ読み進めていくつもりですが、また、おもしろい話があったらご紹介するつもりです。